ホステルとは?

Kyoto Hostel, Osaka Hostel, Fukuoka Hostel

 ホステルときいてみなさんは何を連想されるでしょうか? ホテルの間違い? ホスピタルの間違い? ホステスの・・・違います。ホステル(Hostel)で正しいのです。

歴史

 語源はユースホステル(Youth Hostel)から来ていて、その起源はドイツ人教師のリヒャルト・シルマン(Richard Schirrmann)により1909年に提唱されたユースホステル運動によるものとされています。リヒャルト・シルマンはワンデルンシューレ(移動教室)という野外教育を行っていて、児童たちが安全に格安に泊まることのできる宿舎を、ということをモットーにユースホステル運動を開始させます。そして1912年にアルテナ城の一角に世界最初のユースホステル(ドイツ語:Jugendherberge)を開設します。その後、二度の世界大戦を経るもユースホステルは世界中に広まり、現在では世界80か国、5,500を越えるユースホステルが存在しています。ユースホステルの特徴としては、二段ベッドがある相部屋、個室はあってもシャワー、トイレなどは部屋内になく共同利用であること。また食事は朝食のみが多く、その代わりに自炊のできるキッチン、ダイニングルームやリビングルームがあることなどがあげられます。

日本におけるユースホステル

 1951年に日本ユースホステル協会が発足され、翌年には13施設と契約、1955年に北海道千歳市に直営一号店がオープンしました。高度経済成長の影響で旅行ブームも起き、旅館やホテルに比べて安く泊まれることからユースホステルは順調に数を増やし、1974年のピーク時には580施設(利用者数は63万人で、会員数は世界一!)を越えるまでとなりました。しかしバブル崩壊後は落ち込みを見せはじめ、ビジネスホテルの低価格化やインターネットカフェまた後述する新しい施設が増えたこともあり、ユースホステル利用者の減少は長らく続き2000年には332施設、2013年には222施設まで減少しました。

ゲストハウス、バックパッカーズホステルの勃興

 減少していくユースホステルの一方で、2000年初頭からゲストハウスやバックパッカーズホステルという名称の10名から40名程度が宿泊できる小規模の宿泊施設が東京や京都に増加してゆきます。客室は二段ベッドの相部屋があり、シャワーやトイレ、キッチンにリビングなど館内の大部分が共同利用であること、利用客の多くは若年層や海外からの旅行者であることなど、ユースホステルと多くの共通点を持つ形態でありながら、それらの宿泊施設が増えてきたのはなぜなのでしょうか?

なせゲストハウス、バックパッカーズホステルが広まったのか?

 まず経済要因としては、バブル崩壊後の不動産価格の下落により比較的安価に物件を購入・賃貸することが可能になったことと、円安により訪日外国人が増加し始めたことがあげられます。社会要因としては、IT革命とその後のインターネットの普及があります。観光協会やユースホステル協会に所属することがなくても、自社ウェブサイトや予約サイトを利用することにより一定の集客を得ることが可能となりました。そこに海外旅行や海外赴任中に、自身も利用し楽しむことができたような宿泊施設を日本にも設立したい、という思いを持った若者たちが思い思いの宿を開業していったのです。

ゲストハウス、バックパッカーズホステルの隆盛

 ホテルや旅館の運営となると個人の力だけで始めることはそうそうできませんが、ゲストハウスやバックパッカーズホステルならば可能でした。建物の改装にしてもウェブサイトの作成にしても、自身でおこなったり友人知人を頼ったりすることで削減できる費用も多く、かつそれが宿の魅力の一部になるという利点も、ありました。アニメやマンガ、日本食、ファッション、建築などの日本ブームの後押しもあり、訪日外国人観光客も増加の一途をたどります。2011年の東日本大震災の年には減少しますが、2012年からはLCC(格安航空会社)が日本国内に乗り入れることになり、おもに東南アジアからの旅行者が増加していくことになります。

ゲストハウス、バックパッカーズホステルの現状(2018年)

 2013年9月に2020年のオリンピック開催地として東京が選定されたことにより、活況を呈していたインバウンド事業にさらなる注目が集まることになります。これまで個人や夫婦、友人知人の集まりという多くても4名くらいで開業されていたゲストハウスやバックパッカーズホステルに、投資家や不動産業者、企業などが関わることで、もっと規模の大きい(=ベッド数の多い)宿泊施設が誕生していくことになります。もはや、ゲスト“ハウス”という名前ではおさまらないような100ベッド200ベッド規模の施設が現れていくことになります。建物は“ハウス”ではなく、対象としているゲストも“バックパッカー”だけではないので、この時期に誕生した施設はホステルという名称をつけていることが多いです。中には新築物件で内装に関してもデザイン会社が参加しているホステルもあり、宿泊機能に加えてカフェやバーなどを併設していたりと、さながらホテルのような施設も出てきています。

 ユースホステル、ゲストハウス、バックパッカーズホステル、そしてホステルと名称の違いはあれど、一人でも廉価に泊まることができる相部屋があること、キッチンやリビングなどゲスト同士の交流がうまれる場所があることがこれらの宿泊施設の特徴であると言えます。ただし、2016年頃から、特に京都においては、行政の方針もあり古くからある町家を改装して一棟貸し(一日一組限定)として利用される宿泊施設が増えてきています。こちらは規模の小ささ、そして特定のゲストのための宿泊施設、ということでゲストハウスという名称が多く使われていますが、その性質上、ゲスト同士の交流というのは行われていません。2018年現在では、いずれも行政的には旅館業法における簡易宿所(他には、ホテル、旅館、下宿)というカテゴリーに属する事が多いですが、今後発表される民泊新法との兼ね合いで旅館業法にも変化がでてくるかもしれません。

>> ゲストハウスについてはこちらでご説明しています。